もし私が民主党衆議院議員なら(再掲)

いま政治が面白い。国会は何でもありの状態になっているが、原子力発電問題や消費税問題で、多くの国民が政治に目覚めつつある。そこで、もし私が民主党衆議院議員ならどう行動するのか、私個人の政治的意見は抜きにして、ゲーム感覚で思考実験をしてみよう。
もし私が民主党の衆議院議員で中間派なら、どう行動するだろうか。国民は反増税が多数である。高所得者層は、消費税が5%だろうが、10%だろうが、それほど生活には影響はない。なぜなら、所得の全部を消費に回すわけではないからだ。ところが低所得者層は貯金する余裕がなく、ほとんどは消費に回す。だから生活に消費税が重くのしかかる。現在は貧富の差が広がり、低所得者層が増えている。国民の半数以上は反増税であろう。しかも増税反対が大きな世論になりつつあるのは、「増税に反対ではないが、先にやることがあるはずだ!」という人たちも反増税になっているからだ。
議員であれば選挙のことを考えるのは当然である。それがまた国民の意思を汲み取るということでもある。世論調査を見ると増税反対の意見が圧倒的に多い。いま内閣および党執行部が推進する増税に反対することは、党員であれば処分の対象にはなるだろう。しかし選挙を考えれば、増税賛成では当選できそうにない。三党合意は重いだろうが、国民と約束したマニフェストはもっと重い。マニフェストは単なる選挙公約ではない。予算案を作るときには先にマニフェスト実行の予算をとり、その残りをほかの予算に当てなければならないものである。その覚悟がなければ、マニフェストと名乗ってはいけない。ということで、国民に約束した以上、私は増税反対に回る。造反者と呼ばれるかもしれないが、党内できちんと議論せずに「一任」で了承されたのであれば、「民主主義の手続きが取られていない!もはや民主党と名乗ることも恥ずかしい!」と反論できる。むしろ堂々とマニフェストを守れと主張しているのだから、造反者のレッテルは勲章になる。
支持団体から圧力がかかったらどうするだろうか。支持団体の手堅い票がなくなるのは怖いが、国民を裏切るのはもっと怖い。浮動票を無視できない。現在、支持政党なしがどんどん広がっていることは、団体票が当てにできないことを意味している。浮動票が無気力な票であれば怖くはないが、原発事故後の現在では無気力な浮動票とは侮れない。
小泉純一郎自民党内閣の時にマーケティング調査の手法で、知識者層で内閣支持者をA層、知識者層ではない内閣支持者をB層、知識者層で内閣反対者をC層、知識者層ではない内閣反対者をD層と呼んだ。そしてB層の取り込み対策を講じた。しかし、今はこんな分類が役立たないほど国民が目覚めつつある。それだけ原発事故の衝撃は強かった。マスコミの誘導が効かなくなっていることは、世論調査の結果で分かる。首相官邸の主意を囲んだ原発再稼動反対デモでも分かる。それだけ原発事故の衝撃は強い。
政策の争点が明確でなければ、団体の指示通りに投票するだろうが、自分の生活がかかっているとなると指示通りに投票するとは限らない。なぜなら無記名投票だからだ。自分が誰に投票したのか団体は知る由もない。しかも今回の選挙の争点は消費税と原発というとても分かりやすいものだ。自分の生活を守るために、人びとは行動し始めている。
三党合意がなされたが、選挙の時にはどうするのだろうか。選挙の時には消費税が争点になるだろう。消費税増税賛成と反対の選挙である。自公民は政策で三党合意ができたが、選挙協力もするのだろうか。自公民どれもが増税派であり、候補者を調整しなければ共倒れになるだろう。三党合意で民主党が大きく譲歩したように、立候補者の調整でも民主党は大きく譲歩するのではないだろうか。とくに自民党は前回の総選挙で多くの大物落選者を出しており、譲歩する気はないだろう。地盤のない民主党の新人議員であれば、そんな疑念がよぎる。選挙になったときに楽観できないのは、むしろ民主党増税派である。
それに対して増税に反対するのは、民主党造反者、みんなの党、社民党、新党大地、新党きずな、などである。それに大阪中心の維新の会や名古屋中心の減税日本など地方の動きだ。こちらなら候補者調整はないようなものだ。むしろ候補者不足であり、新人議員であっても現職であれば、まちがいなく候補者になれる。やはり反増税だ。
民主党造反者は小沢一郎氏が率いることになろう。小沢一郎氏は一貫して「増税の前にやることがある!」と主張してブレない。そこは信用できる。では国民の小沢氏に対する評価はどうだろうか。裁判では一審で無罪を獲得した。まだ裁判は続くかもしれないが、新しい証拠が出なければ、一審の無罪が覆ることはない。そもそも証拠もないまま起訴したことが謀略だろう。そして一連の事件が謀略であることは、小沢夫人の手紙をめぐる騒動でも分かる。週刊誌に記事が掲載された時期が時期であるだけに陰謀であることは明らかだ。しかも政治家の本分は政策であり、私生活は関係ない。ヨーロッパの国民のように政治家のスキャンダルには寛容になった方がいい。そうでなければ改革をしようとする政治家ほど、既得権益によってスキャンダルで失脚させられる。選挙民にはそう説明する。
では増税反対で財政問題は大丈夫なのだろうか。日本国債を買っているのは多くは日本国内の投資家である。最近は中国も買っているが、国内での保有率は相変わらず大きい。ここがギリシアと違うところである。スペインともイタリアとも、またアメリカとも違う。それに緊縮財政とは増税だけではない。削るところは大胆に削るのも緊縮財政である。むしろそれが本分である。これが「増税の前にすること!」である。こう主張する
そもそも不景気のときに増税してはますます不景気になり、所得税・法人税収入も減る。なぜなら所得税は累進課税だから、所得が低ければ低いほど税率は下がり、所得税の減少に拍車がかかる。逆に景気が良くなれば、全体として所得が上昇するのだから、累進課税の効果で税率も上がり、所得税収入の増加は促進される。これまでも消費税を上げても影響がなかったのは高所得者に対する減税も同時に行なわれていたからである。今回も消費税以外の税の見直しは先送りされている。これでは消費税を上げても効果は少ないだろう。焼け石に水である。こう説明する。
そもそも消費税だけを取り上げて、10%ならまだヨーロッパよりも低いと主張するのは横暴である。消費税・所得税・年金など全ての税金の負担率を合算した上で、比較するべきである。また消費税を欧米並みにしたいなら、サービスも欧米並みに上げるべきだ。税負担だけ先行ではおかしい。このように主張する。
社会保障問題や雇用問題など「国民の生活第一」を掲げて国内需要を増大させることが、消費増税よりも先だと主張する。
これで確信できた。私が民主党所属の衆議院議員なら反増税に一票で造反する。離党も怖くない。反増税・反原発で選挙も怖くない。
いま自民党は疑心暗鬼なのではないだろうか。国会を延長し、採決を先送りするということは、民主党内の反増税派の巻き返しを許すことになりかねない。小沢氏がすぐに離党表明をしないのは、彼が切羽詰っているのではなく、巻き返しができるなら巻き返しておこうと考えているからだろう。もし民主党執行部が「小沢さんが出て行ってくれた方がすっきりする」と言っているとしたら、あまりに暢気すぎる。もはや政局は反小沢×小沢ではなく増税×反増税になっており、小沢=反増税という印象が国民のなかに浸透しつつあるからである。小沢氏が離党した方が国民は安心して反増税に投票できるのである。自民党が国会延長に反対し、早い次期の採決を求めている理由は良く分かる。

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