数字の読み方・世論調査「消費税増税と小沢新党」

今日は、日経新聞の世論調査をもとに数字の読み方の難しさを論じてみよう。以下に示したのは日経新聞のWebニュースの記事である。私は有料の定期購読者ではないので、無料で見られる部分しか見られないが、これだけでも十分に数字の読み方について論じることができる。

日本経済新聞社とテレビ東京が22~24日に共同で実施した世論調査で、民主党の小沢一郎元代表や一部議員が消費増税関連法案に反対し、離党の構えを示していることを「理解できない」とした回答が53%に上った。「理解できる」は38%だった。社会保障と税の一体改革をめぐる民主、自民、公明の3党合意について「評価する」は36%で「評価しない」の52%を下回った(日経新聞2012年6月24日22:00電子版)

この記事で最初に記されている数字は、小沢氏の行動に国民の理解していないことを示す数字だ。小沢一郎の行動を「理解できない」の人たちが53%にも上り、「理解できる」のはたったの38%だけだと読める。それが目的だろう。この時期の世論調査は民主党の中間派の議員たちに小沢氏に理解を示しているのは、たったの38%だから付いて行ってはいけないというメッセージになる。これが無料で見られる記事で最初に記されている理由だろう。
つぎに付け足しで記されている数字に注目しよう。3党合意を「評価する」のは36%で、「評価しない」の52%を下回ったと淡々と伝えている。なぜ、3党合意を「評価しない」が52%に上ったと記さないのだろうか疑問である。この記し方で印象も変わる。
しかし、ここで小沢氏の行動を「理解できる」38%と、3党合意を「評価する」36%を比較しよう。小沢氏を理解するのは38%で、民主党執行部を評価するのは36%で、小沢氏が2%勝利している。小沢氏に対するネガティブ・キャンペーンにもかかわらず、小沢氏理解の方が大きい。しかも、これらの人びとは小沢新党を支持するだろう人たちである。小沢新党ができたとしても衆議院議員50~60人程度の政党であり、これだけの支持率があれば十分に選挙を戦えるだろう。それに対して3党合意を評価している人たちは、全員が民党支持者というわけではない。自民党・公明党支持者も含まれているはずである。三党合わせて36%であある。これは深刻である。今回の3党合意では自民党のマニフェストの多くが実行されており、自民党をマニフェストで選んだ選挙民は評価しなければならない内容である。それにもかかわらず3党合わせて36%であることは、3党が支持者離れを起こしているということである。
これは日経新聞の意図とは離れて、国民の小沢支持が大きいこと、選挙があれば小沢新党がある程度の議席を確保できることを示している。国民が政治家のスキャンダルを問題視せず、政治家の政策を評価した結果といえる。このように数字は見方によって、その評価が大きく異なる。たしかに世論調査では質問の仕方で大きく数字が変わり、求める数字を出すことができる。この場合であれば、小沢氏の行動を「理解できない」53%という数字である。しかし同時に意図しない数字も表れてしまう。これはやはり調査対象が実在する人びとであり、完全に管理下に置くことは不可能であり、必ずどこかに予想不可能な形でほころびが生じるからである。現代思想的に言えば「他者」の存在である。
この数字をどう評価するかということも重要である。この場合では、3党合意を「評価する」36%である。日経新聞の購読者はいわゆる富裕層や知識者層で体制に順応している人たちであり、いわゆるA層と呼ばれる人たちである。それでもこのような数字が出るのは、民主党執行部や自民党・公明党には脅威であろう。

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